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「とりビー」がごとくの化粧水

居酒屋では初めに「とりあえずビール」と頼む人が多いので、これを「とりピー」と言うそうですが、女性は洗顔後に「とりあえず化粧水」をつけないと落ち着かない人が多いようです。とにかく日本人女性は、化粧水が好きです。欧米では「洗顔後まず化粧水」という習慣はなく、美容液かクリームをつけて終了という人が多いのですが、日本人は先に化粧水をつけないと落ち着かない人がほとんどです。しかし、化粧水の水分が肌の水分になるわけではありません。肌の水分は前述したように、体内にある水が肌の奥からわき上がってきているものです。化粧水をつけないで保湿美容液だけでも、肌にはなんら問題は生じません。

つけてはいけないというわけではないのですが、化粧水は刺激になることがあるので、肌の調子が悪いときはつけないほうがべターです。肌が荒れているときに化粧水をつけて、ビリビリとしみた経験がある人は多いでしょう。水っぼいものほど刺激になりやすいので、肌がデリケートになっているときは化粧水を省いて美容液かクリームだけをつけるほうがよいのです。ところが、この話を女性に受け入れていただくのは至難の業です。化粧水信仰はかくも深く、女性たちの心に根づいています。たとえばうっかりしてひどく日焼けしてしまった場合や、化粧品で顔がかぶれて真っ赤になってしまった場合など、診察にいらした女性の多くが「とりあえず化粧水だけつけていました」とおっしゃいます。

また、例えば花粉で肌が荒れた女性に「これは花粉によるものだから、時期がすぎれば落ち着きます」と説明すると、「じやあとりあえず化粧水でもつけておけばよいですか」と言われます。このような「とりあえず化粧水」現象は、医者からすると、とても不思議なことです。女性の多くが化粧水はまさに「命の水」と信じていますから、もちろんどんなときもそれは必要だと考えています。だから、真っ先につけようとするのでしょう。しかし医者からみれば、肌がひどく荒れてしまったというこの非常事態に際して、化粧水というあってもなくてもよいものにこだわるということが不思議です。

何か重大な病気になったときに「香水はつけてもよいですか」と言うようなもので、だめとは言わないけれども「そんなこと言っている場合じゃないでしょう」という感は(医者の側としては)否めないものです。肌が荒れたときにとりあえず何かつけるならば、化粧水でなくクリームか保湿美容液です。最低限の保湿は必要だからです。化粧水は90%以上が水なので、保湿としては十分とはいえません。保湿成分を含んだ美容液かクリームだけをつけるのがよいでしょう。しかし極度に荒れた肌にはそれも刺激になることがあります。もし美容液をつけてみて刺激を感じるようならばクリームを、それもしみるならばワセリンをつけるとよいでしょう。

化粧水が悪いものなのかというと、そういう意味ではありません。「とりピー」で疲れが癒されるのと同じように、洗顔後につける化粧水で心にしみいる心地よさを感じる人もいるようです。そういう癒し効果を求めて化粧水をつけることは、悪いことではありません。心地よいと感じるメンタルな効果は、肌によい影響を与えるものです。ただし、肌が荒れたときは、化粧水はお休みしましょう。肌にとって化粧水が不可欠であるという考えは捨て、あくまでとりピーのようなものであることを心に留めておきましょう。欧米では水道水が硬水で、石鹸が泡立たなかったり肌に残ってしまったりするため、水洗顔しない人も多いのです。

そのかわりに化粧水(トナーと呼ばれる)で汚れをふきとることが普及しています。化粧水をうるおいのために顔にパッティングしたり、シートにふくませて顔にはりつけたりする習慣はありません。化粧水の水分が肌の水分になるわけではありません。肌の水分は、体内にある水が肌の奥からわき上がってきているものです。そして、肌の水分を守っているのは主にセラミドという保湿物質です。化粧水が悪いものなのかというと、そういう意味ではありません。洗顔後につける化粧水で心にしみいる心地よさを感じる人もいるようですので、そういうメンタルな効果は肌によい影響を与えるものです。ただし、肌が荒れたときは、化粧水はお休みしましょう。