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美肌に大切な湿度とは?

よく「湿度○%」といいますが、これは何を指しているのでしょう。空気中にある水の量? とんでもない。もしそうならば、湿度100%は水の中ということになります(ちなみにミストサウナの中などは湿度がほぼ100%ですが、ミストサウナは水槽ではありません)。気象庁などが発表している一般的な「湿度」は相対湿度のことで、以下のようなものを指します。

空気中に存在しうる水分子(水蒸気)の量は、気温や気圧によって異なります。ある温度、ある気圧のときに空気が最大限の水蒸気を含んだ状態を湿度100%といいます。この水蒸気量を飽和水蒸気量といいます。飽和水蒸気量は、気温が30度のときは約30・3g/立法メートル、気温が10度のときは約9・39g/立法メートル(いずれも1気圧において)。つまり気温が30度のとき、空気は1立方メートルあたり約30gの水蒸気を含みうるということです。飽和水蒸気量の半分の水蒸気が存在している状態が(相対)湿度50%です。

気温が高いほど、飽和水蒸気量は多くなります。つまり、同じ「湿度50%」でも、気温が低いほど空気中に含まれる水蒸気の量は少ないということになります(湿度50%のとき、30度ならば約15g、10度ならば4・7g/立法メートルの水蒸気を含みます)。ちなみに都心の湿度は年々低下しているといいますが、これには都心の気温が(温暖化によって)上がっていることも関係しています。気温が上がれば、空気中の水蒸気量が同じでも相対湿度は下がっていくのです。

なぜ、常に水は蒸発し続けるのか

コップに水を入れて置いておくと、少しずつ蒸発して減っていきます。冬のほうが湿度は低いので、より蒸発は早くなりますが、夏でも冬でもいずれにしても水は蒸発していきます。室内においたパンも、袋に入れておかなければ乾いて固くなります。湿度が100%であれば、コップの水は蒸発しません。肌でいうと、湿度80%以上になると肌の水分は蒸発しないといわれます。東京都の平均湿度は1月で40%台、7月で60%台です。湿度が80%を超す日は年間数日しかないといわれます。つまり、ほぼ一年中、毎日肌から水分は蒸発し続ける運命にあるのです。それを防ぐのはセラミドの働きです。セラミドが肌に十分あれば、湿度が0%になっても水分は蒸発しません。

化粧水をいくら与えても、与えた先からその水は蒸発します。洗濯バサミで留めない限り、いくら干しても洗濯物は飛んでなくなってしまうというのと同じです。湿度を上げて肌の乾燥を防ぐという人もいますが、それは大がかりな試みです。加湿器などを使って部屋の湿度を上げることは意味がないとはいいませんが、部屋全体を改善するよりは肌を変えるほうが簡単なことです。洗濯物が飛ばないようにするために防風壁を作るような、大規模な構想を抱くよりは、洗濯バサミでパチンと留める方が簡単で確実だというのと同じです。

洗濯バサミで留めるとはつまり、セラミドなどの保湿成分を肌に与えて水分をつなぎとめておくことです。加湿器が無意味とはいいませんが、加湿器を使っても湿度を80%以上にまで上げることは難しく、どのみち肌の水分は蒸発するので、やはり保湿対策は必要です。もう少し考えてみましょう。よく、雑誌やテレビの美容特集などで、「冬は暖房、夏は冷房で空気が乾燥するからお肌は乾燥します」などといいますが、本当にそうでしょうか。乾燥肌の大きな原因は、洗いすぎ、間違ったクレンジングなどによってセラミドが奪われることです。湿度による影響よりも、肌のコンディションによる影響の方が大きいのです。朝、子供に干させた洗濯物が午後にはすべて飛んでいってしまった場合、原因は何でしょう。

「風が強かったから」と子供が言えば、あなたは「きちんと洗濯バサミで留めておかないからでしょう」と言いますね。飛んでしまった最大の原因は、飛ばないように対策をしなかったことなのです。大なり小なり、風は毎日吹きます。大なり小なり、肌の水分も毎日飛んでいきます。洗濯バサミをまったく使わなくてもよい無風の日も、年に何日かはあるかもしれませんが、それはごくわずかな例外的な日で、基本的には「風は吹くものだ」と思って、日々対策すべきです。肌の水分も、湿度が80%を超すような例外的な日を除いては毎日飛んでいくものなので、そう思って対策すべきです。「会社の暖房が強いから肌が乾燥して」などと言う人がいますが、それは「風が強いから洗濯物が飛んじゃった(僕のせいじゃない)」と言い訳する子供のようなものです。

水を飲んでも、肌はうるおわない

昔スポーツドリンクのCMにもありましたが、人間の体の3分の2は、水でできています。生きた細胞はひとつひとつ、3分の2(65%)くらいの水を含んでいます。角層は死んだ角質細胞でできていますが、そのすぐ下は生きた表皮細胞で、約65%の水を含んでいるのです。当然そこから水は染み出してきます。水羊羹も約60%の水を含んでいますが、それを和紙にでも包んでおけばじわじわと羊羹から水が染み出してきます。角層に水が染み出すのと似た現象です。染み出した水を角質細胞の間にあるセラミドがつなぎとめて、蒸発しないようにキープします。これが肌の水分になります。

体重50キログラムの人ならばその3分の2すなわち約33キログラムの水を体内にもっていることになります。水源がなくなることを心配してせっせと水を飲む人がいますが、それは杞憂というものです。厚さ20ミクロンの角層をうるおす水源としては、体内の水は十分な量です。冬の乾いた室内では、肌が乾燥するから水を飲むとよいとよく言いますが、それは医学的にはナンセンスです。体内の水がなくなることがあるかといえば、それはいわゆる脱水になったときです。体重の4%以上の水分が失われると意識が低下して、放置すると命の危険にさらされます。そういうときはもちろん肌も乾燥しますが、肌どころではなく救急車を呼ばなくてはなりません。

人が脱水になってしまうのは、激しい発熱や下痢、嘔吐、炎天下の労働をしたときなどです。病気で飲食ができないときや、仕事やスポーツの最中で水分摂取が制限されているときなどは脱水になる危険があるのです。脱水は医学的にみると非常に危険な状態で、日常的に起こるようなことではありません。もちろん暖房がきいた部屋に長時間いたくらいで脱水にはなりません。よって、体内の水が不足して肌が乾燥するなどという心配は無用です。肌のうるおいのために必要なのは水を飲むことでも化粧水をたっぷりつけることでもなく、セラミドをおぎなって水分の蒸発を防ぐことです。

化粧水への間違った思い込み

スキンケアの中では特に、化粧水を重視する女性が多いようです。「化粧水は安物でいいからたっぷりと」「化粧水を100回パッティングするとよい」などという、化粧水に関する格言もたくさんあります。なぜこうも、化粧水を重視する人が多いのでしょう。「肌をうるおしてみずみずしく保ちたい、そのために必要なのは水分だ」という思い込みが定着している人が多く、それが化粧水信仰の基盤となっています。その思い込みを女性の頭から取り除くのは、まさに至難の業です。事実、どんなに肌状態が悪いときでもとりあえず化粧水だけはつけるという人が多いことも、化粧水信仰の厚さを物語っています。

この化粧水信仰を捨てることから美肌は始まるといっても過言ではありません。確かに肌には水分が大事ですが、肌の水分の源は化粧水ではありません。前述したように、肌の水分を守っているのは主にセラミドという保湿物質です。セラミドが減ると、肌は水分を失って乾燥します。セラミドは水と結合して、肌の水分が蒸発しないようにつなぎとめています。風が強い日、洗濯物が飛んでいかないように守る洗濯バサミと同じように、セラミドは水と結合して、水分が飛んでいかないように守っています。洗濯バサミがなければ洗濯物は瞬時にみな飛んでいってしまうでしょうが、それと同様にセラミドがないと、肌の水分はみるみる空気中に蒸発していってしまいます。

セラミドにつかまえられている水は、どこからくるのでしょう。それは体内から常にわきあがってきているのです。肌の水分のもとは、化粧水でなく体内にある水です。人体の3分の2は水でできていますから、体内から肌の表面に向かって常に少しずつ水が染み出してきます。それを蒸発しないようにはさみこんで守っているのがセラミドです。つまり洗濯物を守る洗濯バサミと同じくらい、セラミドは重要な存在です。それでも女性の多くはセラミドでなく水分にばかり気がいって、水分をおぎなうために化粧水ばかりつけ続けるのはなぜでしょう。洗濯場における主役は洗濯物です。洗濯バサミではありません。同様に「うるおい肌」の主役は水分であってセラミドではありません。

そのためどうしても主役のほうに目がいってしまうのでしょう。しかし主役が吹き飛んでしまっては、うるおい劇場もそれでおしまいです。体の中から水分は無限にわきあがってくるので、意識すべきは水分そのものでなくそれを守るセラミドです。洗濯物はどんなに洗っても無限に出てくるから、大事なのはそれが飛んでしまわないように守ることです。セラミドを無視して化粧水ばかりつけ続けるのは、洗濯バサミも使わずどんどん吹き飛ぶ洗濯物をそのまま放置して、あとから新しい洗濯物を干し続けるようなものです。大切な肌の水分を失わないために、まずは「飛んでいかないように守ること」が大切だと心得てください。

皮下組織は脂肪でできたクッション

真皮の下はどうなっているかというと、皮下組織と呼ばれ、ほとんど脂肪でできています。脂肪のまわりは線維組織でおおわれています。脂肪はクッションのように衝撃から体を守っています。もしも脂肪がなくて皮膚のすぐ下が筋肉だったら、痛くてすわれません。手のひら、足の裏、頭皮などにも非常に硬い皮膜におおわれた脂肪組織があり、衝撃を吸収しています。脂肪はそれ以外にも体温を維持する、エネルギーをたくわえるなどの働きがあります。

以上の表皮、真皮、皮下組織の三層構造が皮膚を作っていることを頭にとどめておきましょう。肌トラブルをケアするときは、皮膚のどの部分でそれが起こっているのかを考えながらでないと、適切なケアはできません。乾燥は、(表皮の)角層のトラブルです。シミは、表皮のトラブルです。シワは、真皮のトラブルです。毛穴の開きは、初期は表皮のトラブル、進行したものは、真皮全体にたるみがおよんだものです。シワを気にして化粧水のパックなどをしても、角層までしか届かないので有効とはいえません。

また最近、なんでもナノ化して浸透をよくした化粧品成分がもてはやされますが、保湿成分や美白成分は真皮で働くものではないので、ナノ化して浸透を高めると逆効果になります。ただ漠然と、はやりの化粧品や口コミランキング上位のコスメなどでケアしていても、肌の悩みは解決しません。どの部分にどういう成分を送り届けることが必要かを考えましょう。表皮、真皮、皮下組織の三層構造が皮膚を作っていることを頭にとどめておきましょう。表皮(角層)の水分を守っているセラミド、真皮の骨組であるコラーゲン、それをつなぎとめるエラスチン、まわりを埋めるヒアルロン酸など、肌の仕組みを知っておくことが、スキンケアの第一歩です。