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皮下組織は脂肪でできたクッション

真皮の下はどうなっているかというと、皮下組織と呼ばれ、ほとんど脂肪でできています。脂肪のまわりは線維組織でおおわれています。脂肪はクッションのように衝撃から体を守っています。もしも脂肪がなくて皮膚のすぐ下が筋肉だったら、痛くてすわれません。手のひら、足の裏、頭皮などにも非常に硬い皮膜におおわれた脂肪組織があり、衝撃を吸収しています。脂肪はそれ以外にも体温を維持する、エネルギーをたくわえるなどの働きがあります。

以上の表皮、真皮、皮下組織の三層構造が皮膚を作っていることを頭にとどめておきましょう。肌トラブルをケアするときは、皮膚のどの部分でそれが起こっているのかを考えながらでないと、適切なケアはできません。乾燥は、(表皮の)角層のトラブルです。シミは、表皮のトラブルです。シワは、真皮のトラブルです。毛穴の開きは、初期は表皮のトラブル、進行したものは、真皮全体にたるみがおよんだものです。シワを気にして化粧水のパックなどをしても、角層までしか届かないので有効とはいえません。

また最近、なんでもナノ化して浸透をよくした化粧品成分がもてはやされますが、保湿成分や美白成分は真皮で働くものではないので、ナノ化して浸透を高めると逆効果になります。ただ漠然と、はやりの化粧品や口コミランキング上位のコスメなどでケアしていても、肌の悩みは解決しません。どの部分にどういう成分を送り届けることが必要かを考えましょう。表皮、真皮、皮下組織の三層構造が皮膚を作っていることを頭にとどめておきましょう。表皮(角層)の水分を守っているセラミド、真皮の骨組であるコラーゲン、それをつなぎとめるエラスチン、まわりを埋めるヒアルロン酸など、肌の仕組みを知っておくことが、スキンケアの第一歩です。

シワは乾燥ではない

シワは、乾燥でできるわけではありません。「コラーゲンが減るからシワができる」ということはみな漠然と知っているのに、例えば目元のシワを見るとどうしても「目元が乾燥している!」などと思ってしまうのはなぜでしょう。シワシワの干し柿やレーズンを思い浮かべるからかもしれません。そして思わず化粧水をたたきこんだりして、乾物を水でもどすようにシワが伸びることを期待してしまうのです。しかし、この有効とはいえないケアによって、さわった分だけ肌は確実にいたむのです。

果物は干すとシワシワになります。しかし、肌は遠います。何が違うのかというと、果物は干しておけばどんどん水分が蒸発しますが皮膚は奥の奥までは乾燥しません。前述した皮膚の構造の中で、乾燥して水分が奪われるのは表面の角層だけです。角層より下の表皮や真皮の部分は生きた組織なので、冬であってもエアコンが効いた部屋にいても、そこからは水分は蒸発しません。もし生きた細胞からもとめどなく水分が蒸発していけば、細胞は死にいたり、ついには人間も死んでミイラのようになります。それでは危なくて、うっかりエアコンもかけられません。

植物も、生きた状態では無限に水分が蒸発することはありません。木になった柿が干し柿になってしまうことはありませんね。しかし収穫した果物は、乾いた空気の中においておけばどんどん水分が抜けてドライフルーツになります。話をシワに戻します。角層は厚さ20ミクロンしかなく、そこから水分が抜けてゴワゴワになったとしてもはっきり見えるほどのシワにはなりません。ドライフルーツは果物全体が乾燥してクシュクシュとシワがよりますが、肌はそれとは違うのです。表面の死んだ細胞(角層)から水分が蒸発しても、奥の生きた細胞の水分は保たれているからです。肌のシワは、干し柿のシワよりも洋服のシワに近いものです。

繰り返し同じところを折りたたむと、服の繊維がよれてシワになりますね。シワの部分は他の部分より少し生地が薄くなっているはずです。皮膚でも同じことが起こっています。表情に合わせて皮膚が動き、同じところが折りたたまれることによってコラーゲン線維がよれたり切れたりしてシワが刻まれます。加齢でコラーゲンが硬くもろくなり、また前述したように鉄筋とボルトの構築が壊れていくので、シワ現象は加速していきます。「シワは乾燥」と思いこんでドライフルーツのように扱っていると、シワはいつまでも改善しません。コラーゲンの減少を食い止めるケアこそが、有効なシワ対策になります。

コラーゲンを増やすにはどうしたら?

「コラーゲンが減ることが問題なら、コラーゲンを飲めばよいじゃない」と思う人もいるでしょう。しかし飲んだコラーゲンは、そのまま肌のコラーゲンにはなりません。飲んだコラーゲンは胃腸で分解されて、アミノ酸になります。コラーゲンのまま吸収されることはないのです。アミノ酸はコラーゲンを作る材料にはなりますが、コラーゲルを作る線維芽細胞が老化して働かなくなっているところへ材料だけ補給しても、コラーゲンをどんどん作り出すことはできません。老朽化した工場に原料だけ送り続けても、工場のほうも困
ってしまいます。

塗るコラーゲンというものもありますが、これも肌に浸透はしません。最近では分子を小さくしたコラーゲンを配合した化粧品も売られているようですが、分子が大きいのがコラーゲンの定義ですから、分子が小さいコラーゲンというのは「低い高層ビル」というのと同じくらい矛盾しています。もちろん分子の小さいコラーゲンは本当のコラーゲンでなくアミノ酸などですが、それらがもし仮に肌に浸透したとしても肌のコラーゲンにはなりません。美容医療で「コラーゲン注射」というものが昔から使われています(最近はヒアルロン酸が主流になりつつありますが、浅いシワ等には現在も使われています)。

牛から取り出したコラーゲンを皮膚に注射してシワを目立たなくするというものですが、注射で入れても数ヶ月で吸収されてなくなってしまいます。人間の体は基本的に、自己以外のものを受け付けないからです。体内に入ったものを何でも自己の体と同一化してしまったとしたら、それも問題です。牛のコラーゲンも人間のコラーゲンと違うので、定着はせず、吸収されてなくなってしまうのです。飲むコラーゲンや化粧品に含まれるコラーゲンが仮に真皮に届いたとしても、自分のコラーゲンではないので定着はしません。

ちなみにサプリメントや化粧品に使われるコラーゲンは魚のウロコからとったものがほとんどです。かつてはこれらも牛由来でしたが、BSE問題があってから原料が魚に変わりました。魚のウロコは90%以上がコラーゲンでできており、コラーゲンを抽出するのに効率がよいのです。ウロコから抽出したコラーゲンは、そのままでは魚くさくて化粧品などには使えないので、脱臭処理をしてから使われています(海由来なのでマリンコラーゲンなどと呼ばれます)。また、「コラーゲン鍋」のような食べ物に使われるコラーゲンは、大半がゼラチンです(ゼラチンはコラーゲンの一種です)。

真皮を支えるコラーゲン

表皮の下が真皮で、ここにコラーゲンがあります。コラーゲンを知らない人はいないけれども、コラーゲンとは何かといわれると曖昧な人が多い。ただ漠然と「お肌にはコラーゲンが重要」くらいに考えている人がほとんどのようです。コラーゲンは真皮に存在する、ゴムのような弾力のある線維です。コラーゲンが網目状の構造を作って皮膚を支えているので、皮膚はひっぱっても元に戻るのです。真皮全体の70%を占めるコラーゲン。真皮はほとんどコラーゲンの塊と考えてよいくらいです。皮膚全体をビルに例えると、コラーゲンは鉄筋の役割です。

さらにそのところどころをボルトのようにとめているのがエラスチンです。エラスチンはコラーゲンよりも量はずっと少ないですが、鉄筋を支える重要な役割をしています。紫外線や加齢の影響でコラーゲンやエラスチンが減ることが、シワやたるみの最大の原因になります。鉄筋のまわりを埋めるセメントの役目をしているのが、ヒアルロン酸というゼリー状の物質です。ヒアルロン酸は水をたっぷり含む性質を持ち、そのため真皮の水分は65%もあります。赤ちゃんのときはさらにヒアルロン酸が多いために真皮の水分は80%近くもあります。

加齢とともにヒアルロン酸は減り、肌の水分も低下します。古くなったソファは、へこんだままもどらなくなります。これが皮膚のシワと同じ現象です。真皮にあるコラーゲンもエラスチンもヒアルロン酸もすべて、加齢で減少していきます。ソファでいうと、支えのスプリング(=コラーゲン)が戻らなくなり、まわりを埋める綿(=ヒアルロン酸)もスカスカに減っている状態です。これらはいずれも真皮にある線維芽細胞という細胞から作られているもので、線維芽細胞が老化して働かなくなるために、すべて減ってしまうのです。

エストロゲンという女性ホルモンもコラーゲンを維持することに貢献していますが、30代半ばからは減っていくのでコラーゲンは急激に減少し、シワができやすくなります。また、紫外線も影響します。紫外線を二分浴びるだけで、肌の奥にはコラーゲンを破壊する酵素が発生するといわれます。主要な骨組であるコラーゲン、それをつなぎとめるエラスチン、まわりを埋めるヒアルロン酸、この三役がいずれも減少すれば、丈夫な鉄筋のピルも崩壊の危機を迎えます。弾力を失った肌にはシワが刻まれ、さらに全体がたるんで下がっていきます。シワは乾燥によってできると思う人が多いようですが、そうではありません。シワはこのような肌の構造の変化がもたらすものです。

ターンオーバーする表皮細胞

わずか20ミクロンの角層の下には、生きた表皮細胞があります。表皮の厚さは約0.2ミリ。一番奥の基底層というところで表皮細胞が生まれ、上に押しあがっていき、最後に死んで角質細胞となるのです。それまでの期間が約4週間で、この表皮細胞が生まれ変わるサイクルをターンオーパ-といいます。基底層のところどころにメラノサイトというメラニンを作る細胞があります。メラノサイトは紫外線を受けるとメラニンを作りだしますが、こすることでもメラニンが増えてしまいます。その他ストレスやホルモンバランスの変化などもメラニンを増やすことが知られています。

セラミドの分子と水分子は、交互にサンドイッチ状に積み重なって層を作ります。クラブハウスサンドのように何層も重なり合って、層板構造と呼ばれる構造を作り出します。角質細胞同士の間には、約8層ずつこの層板構造があるといわれます。皮膚を電子顕微鏡で拡大して見ると、角質細胞の間にあるセラミドと水の層が、しま模様のように浮かんで見えます。セラミドの間にはさまれた水は、湿度が0%になっても蒸発しません。また、気温がマイナス20℃になっても凍りません。まさに神秘の水です。

さらにセラミドは、角質細胞同士を接着する役割ももちます。角質細胞をレンガにたとえるならばセラミドはセメントの部分です。細胞同士をぴったりとくっつけて、外からものが入ってくるのを防いでいるのです。セラミドがたくさんある肌は、水分を含んで潤っています。セラミドが失われると肌は乾燥し、また、角質細胞同士の接着が弱まり、すき間ができ、そこから外的刺激が入り込みます。これが乾燥性敏感肌です。